Notes

1. What Is Philadelphia?

フィラデルフィアというゲームは元々「2箱以上作るつもりのないゲーム」として構想されました。

酷い考えかもしれませんが、私は「たくさん売れて色んな人の手に渡る」なんてことは初め眼中に無く、自分のニーズに応えられるゲームを仲間内で遊んで楽しめればいいという風に、ただ自分がそれをプレイしたいがために作りました。

しかし幸か不幸か、その考えから生まれたが故に明確なコンセプトと他ゲーとの差別化点を持ったものが必然的に出来たのかなと思います。

星の数ほどあるボードゲームの中でプレイヤーはどうしてそれを選ぶのか、いわば存在意義は自分の制作のモチベーションに等しく、フィラデルフィアというゲームにコンセプトも存在意義も無ければルール制作なんて1時間で飽きていたと思います。

4,5回で飽きるゲームを作るくらいなら、その時間でプレイヤー側として他の好きなゲームを遊んでいたほうが楽しいですからね(;^_^A

フィラデルフィアのコンセプトは「コンボを発見して実行するゲーム」です。

私はドミニオンやHS(ハースストーン)等、カードゲームが特に好きなのですが、対戦して上手いプレイで相手を負かして~という駆け引き的な部分よりは、新カードや既存のカードプールを眺めてシナジーに気づいて、それを実際に試した瞬間というのが楽しみの大部分でした。

デッキ一覧には戦えるデッキが少々と、後はもうオモチャに近いような試作のコンボデッキがたくさん。

そんな中で思ったのが、この「色んなカードの中からシナジーを考える」ことを中心に置いたゲームが思い当たらないことと、気づいた所でそれを実行するまでが長いということです。

ドミニオンではカードのシナジーを知っていても、それらがサプライに共に選ばれ、さらにその戦略に向かうのが最適であるという状況は意図的に組まなければ中々巡り会えません(最も、意図的に組んだ時点で「発見」からは程遠いですが)。

TCGでも、コンボを試したいのに、それが叶う局面になるまで対戦をこなすというのは冗長に感じて仕方ありませんでした。

そんな思いから生まれたのがフィラデルフィアです。

プレイヤーは半端ない種類のコンボ向きなカードの中から7枚を手札として与えられ、頻繁に変わる手札からシナジーを発見します。

コンボをしてお金を稼ぐのは勝利には必須で、手札のシナジーに気づいたら、与えられた2アクションでそれをすぐに実行でき、効果を実感できる。

コンボをするというただ1点のため他の一切のストレスフルな時間を除外したようなゲームです。

コンボを発見する楽しさを奪わないよう、Twitter等で行っているカード紹介でも「〇〇(カード名)と相性良くて強い!」というようなネタばらしは可能な限り控え、宣伝用のプレイ動画の撮影も話が上がってすぐに却下してきました。

カード効果を考えた張本人であり、何十回というテストプレイとやりこみを経た今となっては、自分にはこの「発見」という部分は薄くなってしまったとは思いますが、カードを作ってテストプレイすると自分も把握していなかったすごいシナジーが発覚して場が湧く等、このフィラデルフィアの制作というのはそれ自体が自分にとって楽しいゲームであったと感じています(おかげでカードのバランス調整は自信を持てるまで1年を費やしてしまいました)。

そして、別の記事にもすると思いますが、理不尽な運要素としてではなく、ゲーム展開にブレを与える程度の、“役割を抑えた”サイコロといったリプレイ性を高めるゲームシステムもいくつか取り入れ、仮に発見がなくとも何度も遊べる形に仕上げた結果、仲間内では今もボドゲで遊ぶと言えばこのゲーム、というほど繰り返し楽しめています。

そんなこんなで、この「発見」という楽しさを他の人と共有したいという考えに至った部分もあり、現在ゲームマーケットへの出店という所まで来てしまった、という所で今回は終わりたいと思います。

(出店経緯の残りの部分は、このゲームを気に入ってしまい、雑な名刺版でなく高品質な製品として自分用に欲しくなったためという理由です(笑))。

執筆者:Yuichi Ebina(ゲームデザイン)