Notes

2. お金と勝利点が異なるゲームでも、コンボゲーなのか。

このゲームの説明やルルブを見て、恐らく誰もが驚く部分があると思います。「勝利条件」です。

フィラデルフィアでは勝利点が10点になると勝ちで、その勝利点はなんと「役提出」というセットコレクションを行うことで入るのだと。

しかし、この1つ前の記事や再三目にしたゲームの紹介文には、コンボでお金を稼ぐのが醍醐味のゲームであるとあり、おそらくこのゲームを手に取ったプレイヤーもそれが目当てなのでしょう。

役提出というシステムを見た後だと、コンボなんかしていても勝てないんじゃないか、という印象を受けるかもしれません。

では、ゲーム開始時から役提出だけひたすら狙うプレイヤーと、反対にお金をひたすら稼ぐプレイヤーがいた場合、勝つのはどちらか?

結論から言うと、何度も周囲の色んな人に協力を頂きテストプレイにて検証しましたが圧倒的に後者の方が勝率は高い。というか前者はボロ負けします。

仮に、「農家」や「バス会社」といった使い易いもので少額のお金も少し稼ぎながら役提出を狙ったとしても、シナジーをしっかり生かしてコンボしているプレイヤーにはまず勝てません。

全15枚あるアイテムカードは、「アイテム」というなんだか色々できそうな名前をしておきながら、実は7割くらいは方法が違うにしろ、お金を勝利点へと変換させる効果です。

例をあげると「残業」というアイテムは7金で購入でき、アクションも消費せず1点得られます。1枚の掲載で得られるお金は、コンボを抜きにするとだいたい5金前後なので、2枚掲載すればお釣りがきますね。

役だけ狙って「探査」とかをしているより、こういったアイテムを購入した方が断然安定して点数が入り、近道なのだと分かります。

もう1つ、お金を重要にする要素に「フィーバー」があります。

積極的な役提出で序盤から勝利点を先行したプレイヤーは、このカードに常に怯えるような形になる事も多いです。

フィーバーは、勝利点0でもお金を大量に持ったプレイヤーが、いきなり7点8点という大量得点で爆発できる派手なカードであり、ゲーム側がこれまでのプレイヤーの行いを評価するような「次のステップ」へと場を遷移させます。

フィーバーの存在は2アクション選んでいくだけという単調なゲームに起伏を与えると同時に、ゲームを上記のような2つのパートに分けます。

「最後までコンボだけしているゲーム」で終わらせないことも、リプレイ性を高めるための試みの1つです。

お金をそのまま勝利点にしなかったのはこのためであり、役提出というシステム自体、あくまでお金の方を強くしつつも、手札の1枚1枚を結び付けてただコンボするのではなく、同時並行で捨て札や場、手札といった全体もある程度見渡し、最も勝利点を得られるのはどういった手かという悩ましくなれる要素を取り入れるためのものです。

いくらコンボが好きでも、それが唯一のゲーム性だったりしたらそのうち飽きてしまうでしょう。

ゲーム中は、役を崩してまでコンボをした方がいい時や、逆に1点でも点数を先に取っておいたほうがいい時など、解が変化してくれるゲームになってくれたと感じています。

同じ業種のカードにわざとシナジーをつけるようにもしてあり、いい具合のジレンマが産まれているのではないでしょうか。

一方で、リプレイ性を追求した結果、全体を見渡すというのが難しい初見のハードルが上がった感じは否めず、「コンボしたいのに役提出の運ゲーじゃん」と1回で斬り捨てる方も出てしまうのが、悔しくもあるのですが・・・。

フィラデルフィアはコンボを手札から発見する、という内容である以上、手札にコンボできるカードが常に揃うか、カードがランダムな以上必然的に運要素は強まります。

この時点で、このゲームの立ち位置というのはガチガチの戦略ゲーではなく、運:実力が3:7~4:6くらい、4人でも慣れたら1時間はかからないような軽さを持ちつつ、カードテキスト&コンボという重くなりがちなテーマを遊べる「軽く遊べるコンボゲー」となるよう制作しました。

テーマカラーも軽さを感じるようなライトブルーです。

役を揃えるという運要素も、この立ち位置であったからこそ邪魔にならず馴染めたのだと思います。

余談ですが仲間内では、やり込んだ制作陣の平均以上にさらにやり込んだ1人が7割近い勝率で勝っています。

はい、カード考えた私もずっと負けています(最初は自分が連勝してたのに)。

4:6は結構な運ゲーだろと思ってもいましたが。実はこのゲーム、私が思っているより実力が出るのかもしれません・・・。

執筆者:Yuichi Ebina(ゲームデザイン)